マンション関係裁判例集(第四十九歩)
■理事会 その1
7.■理事会への理事の事故による代理出席の有効性訴訟 平2年11月26日 最二小判
概要
①理事会への理事の代理出席を認める旨定めた管理規約(理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者または一親等の親族に限り可能)を有効判断
6.■2名のみ所有する建物の管理組合集会を一人だけ招集 平17年10月27日 東京地判
概要
①原告と被告の2名のみが区分所有する建物につき、議決権の60%を持つ被告が招集し、被告のみ賛成した管理組合集会決議の有効性
②法39条の議決要件(区分所有者と議決権の過半数)を満たしておらず無効
5.■元12年間理事長が輪番制立候補を総会で否決され提訴 平19年7月25日 東京高判
概要
①12年間連続理事長を務め退任した元管理組合役員が、役員選出の細則(輪番制・立候補)により自身の選出区に立候補したものの総会で否決され、役員地位確認を求めて提訴した
②細則より規約の規定が優先されるとして棄却
4.■総会招集のための名簿閲覧請求は可能 平29年10月26日 東京地判
概要
①管理組合理事が、管理組合の修繕工事等の発注方法に不信を抱き、組合員の総会招集権を行使するために、他の組合員と連絡を取る目的で管理組合員名簿の閲覧を請求した
②名簿の閲覧の範囲を制限すべき事情は認められないと請求を全面的に認容
3.■理事会で理事長の解任可能 平28年7月20日 東京高判
概要
①元理事長の解任や新役員選任の集会決議(監事が招集)を有効と判断した
②理事会決議による理事長解任を認めた
2.■理事会で理事長職を解任可能 平29年12月18日 最一小判
概要
①理事長が総会でなく理事会で解任(解職)されたことから、その有効性をめぐる訴訟が解任された理事長から提起された
②管理組合の理事長を理事会の決議で解任することはできる
1.■監事が招集した総会での理事の解任 平30年9月25日 東京高決
概要
①理事の「罷免」を議題に挙げた臨時総会を監事が招集し、解任を決議したのは監事の権限を逸脱していると解任された理事が地位保全の仮処分を申し立てた
②監事が招集した総会での理事の解任決議を認めた
■理事会 その2
8.■帳簿閲覧請求訴訟後の譲受者は利害関係者でない 平14年8月28日 東京高判
概要
①リゾートマンションの元区分所有者が管理組合役員の責任を追及するため、会計帳簿等の閲覧を管理組合に請求訴訟係属後に自己の区分所有権を譲渡した
②元の区分所有者は、規約上の利害関係人にあたらず、管理組合に対して会計帳簿の閲覧・謄写請求権を有しない
7.■エレベータ保守契約の期間満了前解除 平15年5月21日 東京地判
概要
①エレベータ保守契約の期間満了前解除(故障等が頻発し保守業者に信頼感を損ねた)に対する、保守業者からの残存期間の報酬請求
②棄却した(管理組合側の解除の自由を保障)
6.■携帯電話基地局の設置は普通決議で足りる 平21年2月27日 札幌高判
概要
①屋上に携帯電話の基地局電波塔を設置することは重大変更に該当せず、民法602条(短期賃貸借)の適用が排除され、管理規約に基づき普通決議で足りるとした
5.■役員誹謗中傷行為は共同の利益に反する行為」に当たる 平24年1月17日 最三小判
概要
①管理組合役員らを誹謗中傷する内容の文書配布や工事業者の業務妨害等の行為は「共同の利益に反する行為」に当たるとみる余地がある
4.■新旧理事の対立 平27年6月24日 東京地判
概要
①原告元副理事長が必要のない空調機の入替えを行い損害を与えたとして被告の管理組合と理事長が責任を問う決議や広報を行った(名誉棄損)ことに対する損害賠償請求等(本訴)と、
②被告の管理組合と理事長が原告の債務不履行責任に基づく修理費請求(反訴)
③双方の請求をいずれも棄却した
3.■会計が横領して役員の善管注意義務違反 平27年10月1日 東京高判
概要
①会計が着服横領した損害(1億円超)を当時の理事長、会計監査に賠償責任(善管注意義務違反)訴訟
②連帯して約464万円(被害額の1割)を支払うよう命じた
③(自主管理に協力しない組合員にも責任があるとして、9割を過失相殺)
2.■管理組合の文書閲覧と写真撮影は規約になくても可能 平28年12月9日 大阪高判
概要
①管理規約に明文の定めがなくとも、各区分所有者は、民法645条(受任者による報告)に基づき、管理組合が管理業務について保管している文書(会計帳簿の裏付けとなる原資料等)の閲覧及び閲覧の際の文書の写真撮影を請求する権利を有する
1.■規約改正で給排水工事における修繕積立金の取崩し可能 平29年9月14日 最決
概要
①規約を改正して修繕積立金を取り崩し、また借入金を修繕積立金に組み込んで、共用部分の給排水管と接続する専有部分の給排水管工事費用及びその設備(浴室設備、トイレ設備、給湯器、洗濯パン)の刷新工事費用に使用できる
以上