アメリカ便り(第四十九歩)
■クライドウォーレンパーク
最近は、日中暑すぎないさわやかな気候で大変過ごしやすく、学校が春休みということもあって公園にピクニックに来たりなど野外活動を楽しみ人が増えてきています。
日本はもう桜の季節ですね。ダラスでは、ブルーボネットという小さな青い花がテキサス州の花として登録されてますが、この時期満開になります。郊外に出ると牧場がブルーボネットでいっぱいになっていたりして、つい車を止めて写真撮影に熱が入ってしまうこともあります。
ところで先日、都内のとある大手不動産から、以前紹介したことのあるクライドウォーレン公園を視察したいということで同行させていただきました。都内に沢山の大きなビルを所有している中、いたるところに公共スペースがあるのでそれらを効果的に活用している事例として参考にしたいとのこと。NYCのブライアント公園や、最近できたハイラインなどもこれまで視察されておられてかなりのプロフェッショナルな方たちでした。今回、クライドウォーレン公園のCEOであるKit Sawers氏と彼女の紹介でダラスで不動産業をしているSawako Miyamaさんから公園の歴史と運営についてお話を伺う機会に恵まれましたので、簡単に紹介したいと思います。
クライドウォーレン公園は、フリーウエイの上にデッキ型につくられたものですが、このコンセプトは、1960年代にダラス市長がWoodall Rogers Freewayをへこみ型にする事に決めた事に端を発しているのだそうです。テキサス州は亜熱帯地方で夏の暑さは人を寄せ付けませんが、冷房システムの導入によって街の開発が加速されました。1990年代前半の恐慌によってゴーストタウン化した後の再開発として、2002年にそのアイデアが不動産コミュニティで再び議論され、不動産投資家John Zogg氏がこのプロジェクトに向けたラリーを始めました。
2004年に、不動産評議会による$1Mの寄付、テキサスキャピタルバンクから$1Mの寄付、同銀行創業者Jody Grantのポケットマネーから$1Mの寄付合わせて$3Mが集まり、デッキ型公園建築の可能性についての調査を行ったそうで、https://www.klydewarrenpark.org/our-story この際、NYCのブライアントパークはプログラミングで成功している公園として参考になったのだそうです。
ダラス市から投資信託$20M、テキサス州から、高速道路建築費用$20M、政府から援助金$16.7M、これらが基礎のデッキ建築に使われました。また、一般から直接寄せられた寄付約$60Mが、デッキの上のアメニティに使われ、2009年に工事が始まり、2012年に公園がオープンされました。資金を集め開始から8年かかっていますが、費用などが明確にされているのは素晴らしいですね。
ダラスダウンタウンは職場のダウンタウンと居住地のアップタウンを高速道路が物理的に分断していましたが、最近は居住地向けの建物にコンバージョンしたビルディングも多くなり、居住者も急増しています。平日は、ダウンタウンやアップタウンの住人の利用が殆どですが、週末は郊外からこの公園を目的地としてダウンタウンに人が集まるようになり、昨夏にアメリカで観測された日食のイベントが会った時には、世界72ヵ国から人々がこの公園を訪れて、この公園での日食観測イベントに参加したそうです。 https://youtu.be/61FZMurmE1c
現在は、連邦銀行、テキサス銀行、バンク・オブ・アメリカ、チェイス、ゴールドマンサックスなど、金融機関も多く、NYのWALL STREETに対抗してYA’LL STREETと呼ばれるようになっtているとのこと。この公園ができた事による経済効果は大きく、不動産価値が$2.2Bから$8.5Bに跳ね上り、大成功した公園ということで世界中から注目されているそうです。https://dallasexpress.com/business-markets/wall-street-moving-to-yall-street/
公園オープン当初はインストラクターに費用を支払ってイベントを開催していましたが、公園の知名度向上による宣伝効果が期待される現在は、無料でスペース利用可能にすることで利用者が増え、年間1300のプログラミング無料イベントが開催されています。また、年に6回、貸切のイベントが行われています。主な年中イベントは、独立記念日セレモニー、ハロウインパーティ、クリスマスツリーライティングなどで、最大35000人の来場者があったイベントもあるそうです。
今年の5月に初めてmusic festivalイベントを行う予定で、$100K収入の見込みがあるので、上手くいけば今後毎年開催したいとのこと。 https://dallas.culturemap.com/eventdetail/klyde-warren-park-presents-memorial-day-music-fest/ 来年は、米国誕生250周年記念イベントとFIFAのワールドシリーズが8試合開催される際に貸切り予定がはいっているのでますます賑やかになっていくことが期待されています。
来場者の人数把握手段として、3rd party Placer AI https://www.placer.ai/ や、公園のwifi接続時のemail登録数、そして現場のセキュリティの人たちによるカウントによって実現されているようです。ニュースレター登録者数は、7万人程度いる。ニュースレターメールの開封率は35%と高い。(開封率は、一般的には10%で20%あれば良いとされている。我がニュースレターも高開封率のようで、鼻が高いです。笑)
毎年、$1.5~2MがPID(Public Improvement District)から用意されるが、公園の運営には$700Mかかっているので、その資金を調達するために、常に個人や法人、政府などから支援を募る活動を行っているとのこと。その他、フードトラック、各イベント、メンバーシップからそれぞれ$1M程度の収入源となっているそうです。
CEOのKitさんの下で、マーケティングやファンドレイズなどの実務を行っている主力の3名を含めた10数名のメンバーが活動されています。セキュリティと清掃は外注。これらの活動内容を20−25人が在籍している理事会にKitさんがCEOとしてレポートしているそうです。https://www.klydewarrenpark.org/leadership セキュリティ的には、24時間体制のセキュリティを雇うことで、ホームレス対策を行い、開設当初より公園利用におけるルールを設け、市や警察との協力体制も整えてあるそうです。Kitさんは、ダラスでスーパーボールを開催した際のディレクタをしていたと聞いて、さすが人脈がすごい方だな、それゆえにこの公園の成功があると思いました。やはり人ですね。
いや~、実に充実した公園視察に参加できて、ますますこの公園に感情移入してしまいました。ではまた!
(米テキサス 谷 景太)